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2013/02/27

乾ルカ著「たったひとり」(文藝春秋社、1575円)を読む

札幌在住の作家、乾ルカさんの最新作「たったひとり」(文藝春秋社、1575円)を読む。

本作は版元によれば、「筆者畢生の新感覚ホラー」である。物語は27年前に土砂崩れで半壊したラブホテルを大学の廃墟探検サークルが訪れたところから始まる。メンバーは男3人女2人の5人。一行が足を踏み入れたところで、27年前と同じ崩落事故が起きる。5人は前回と同じ状況に投げ出されていたのだ。そして1人の犠牲者が出ていることから、だれがその「たったひとり」の人物なのかを特定するための脱出劇が始まるが……。極限化でむき出しになるエゴと思惑。運命が5人を連れて走り出す。

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さて、一種の心理劇なので、関係のリアリズムが基本線であるが、とてもよく書けていると思った。しかも、青春小説であるから、若い人の恋と夢に前のめりの部分が大きなカギであるが、そちらもしっかりと捉えられていた。

作者のインタビューによれば、自分の中の悪意が露出しているとのことだが、5人の登場人物にどうも共感できないまだるっこさはそんなところにあるのかもしれない。ダークサイド(暗黒面)に落ちることで、光は見えるものだ。

タイムワープという設定はゲームやらSFやらでは、よくある仕掛けかもしれない。なんどもリセットされることで物語は次第に終幕へと運ばれるのだが、解放感が訪れないのは作者の狙いとはいえ、カタルシス好きの私にしてはもったいない気がした。

どうでもいいことだけど、27年前という設定には極悪ぬいぐるみ映画「テッド」のテッドがジョン少年のところに現れたころであり、みんな変わっちゃうなあ、と月日の長さを感じたことであった。それから、私はなぜかクローネンバーグ監督のRPG映画「イグジステンズ」って、どんな映画だったっけと考えていた。あれはわけがわからない内容だったけれど。私の深層無意識でパラレル感がつながったのかどうか。不思議な小説を読むと不思議な気分になる。

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