« 道立文学館で「特別展『高橋揆一郎の文学』」を開催中 | トップページ | 乾ルカ著「たったひとり」(文藝春秋社、1575円)を読む »

2013/02/26

■けふの身辺雑詠-20130226

作家、高橋揆一郎の代表作と言えば第11回(1977年)北海道新聞文学賞受賞「観音力疾走」であろう。

本作は「まむしの伝吉」と言われた乱暴者の炭鉱員を夫に持った「わたし」(下敷きとなった作品「坑夫伝吉」では「ふさ」とある)が炭鉱の事故で目を開けるだけで寝たきりになった伝吉との人生を振り返るひとり語りの物語である。

伝吉は嫌われ者であったけれだ、先夫との病気を持った「わたし」の息子青治(彼の名前は本当は清治のはずであったが、届けを出すときにさんずいを付け忘れたので、青治になってしまったという。不慮の死を遂げる)をかわいがるなど、腕一本ヤマで生きてきたらしい激しい気性を持つ男だった。

最底辺で生きる男と女の物語が「わたし」によって、淡々と語られる。主人公が唱える呪文が「みっしょうかなりき」。これは「観音力疾走」がいつのまにか逆立ちしてしまい、「しっそうかんのんりき」→「みっしょうかなりき」となった。観音信仰では「念彼観音力 疾走無辺方」というお経の一節があり、これは「観音菩薩の力を念ずれば、どこまでも彼方までその力は届くだろう」という意味だ。浄土信仰の「南無阿弥陀仏」(阿弥陀如来の絶対他力に帰依します)に近いものがあるかもしれない。

炭鉱では生きる者と亡くなったものが背中合わせで存在している。薄明と漆黒がせめぎ合っており、たくましく、せつなく、悲しい。

Kannnonnriki

坑道の 闇の奥 「みっしょうかなりき」 =高橋揆一郎「観音力疾走」に寄せて

|
|

« 道立文学館で「特別展『高橋揆一郎の文学』」を開催中 | トップページ | 乾ルカ著「たったひとり」(文藝春秋社、1575円)を読む »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/87302/56845148

この記事へのトラックバック一覧です: ■けふの身辺雑詠-20130226:

« 道立文学館で「特別展『高橋揆一郎の文学』」を開催中 | トップページ | 乾ルカ著「たったひとり」(文藝春秋社、1575円)を読む »