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2011/08/01

「作家と戦争」を読む

特集「作家と戦争 -太平洋戦争70年」(河出書房新社、1680円)を読む。よくわからないが「KAWADE道の手帖」というシリーズの一冊か何からしい。

Sakkasenso

冒頭に吉本隆明「文学者と戦争責任について」という86年12月に発表された文章がある。以下、吉野孝雄「『文学報国』という名の言論統制」、高柳克弘「俳句の終点へ」、田中綾「歌人と戦争責任」、高橋敏夫「『死』を言祝がぬ人々のほうへ」、安藤礼二「永遠の夏」、陣野俊史「アナロジーとファンタジー」、高澤秀次「林房雄『大東亜戦争肯定論』を読み直す」、林浩平「三好達治と戦争」という8本の論考が並んでいる。さらに川村湊・成田龍一「3.11からアジア太平洋戦争を照射する」という特別対談が載っている。そのほか、後半は「戦争文学アンソロジー」として斎藤茂吉、岸田国士ら9人の作品が並んでいる。

もちろん一番読み応えがあるのは川村湊の対談で、東日本大震災・福島原発事故以降の川村の青春本卦還り的な怒りが伝わってくるところである。

巻頭にある吉本隆明の「文学者の戦争責任論」が本書の全巻の基調となっている。吉本が戦後の民主文学運動家による戦争文学者摘発を批判し、スターリニズムとファシズムを串刺しにする二段階転向論によって、戦略的高地を獲得したことの意味があらためてよくわわる。民主主義運動家の生産力理論などへの転進による現実逃避の自己肯定の論理批判は今も重いものがある。

戦争と震災を結びつける指向には必ずしも同意できない。しかし、原発事故によってはしなくも露呈したものは、文学報国会ならぬ科学報告会=原発村の論理の非大衆性であった。そのことは考えさせられることである。

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