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2011/07/08

佐野眞一著「東電OL殺人事件」(新潮文庫、740円)を読む

エリートOLは、なぜ娼婦として殺されたのか――。
彼女は私に会釈して、「セックスしませんか。一回五千円です」といってきました――。古ぼけたアパートの一室で絞殺された娼婦、その昼の顔はエリートOLだった。なぜ彼女は夜の街に立ったのか、逮捕されたネパール人は果たして真犯人なのか、そして事件が炙り出した人間存在の底無き闇とは……。衝撃の事件発生から劇的な無罪判決までを追った、事件ノンフィクションの金字塔。

佐野眞一(サノ・シンイチ) 1947(昭和22)年東京生れ。出版社勤務を経てノンフィクション作家に。主著に、民俗学者・宮本常一と渋沢敬三の交流を描いた『旅する巨人』(大宅賞)、エリートOLの夜の顔と外国人労働者の生活、裁判制度を追究した『東電OL殺人事件』、大杉栄虐殺事件の真相に迫り、通説を大きく覆した『甘粕正彦 乱心の曠野』、『阿片王 満州の夜と霧』『沖縄 だれにも書かれたくなかった戦後史』『ドキュメント 昭和が終わった日』『鳩山一族 その金脈と血脈』など多数。(新潮社HPより)


佐野眞一著「東電OL殺人事件」(新潮文庫、740円)を読む


1997年3月19日に、東京電力社員(39歳)のエリート女性が東京でも屈指のラブホテル街である渋谷区円山町のアパートの空室で殺害されているのが発見された。この謎の多く、センセーショナルな事件が人々を「発情」させる根因に迫っていくノンフィクションである。

女性の中に「自己処罰」の厳しさを発見しつつ、彼女に逆照射された人々−犯人とされているネパール人青年、交友のあった客、目撃者、そして家族、企業、社会、世界−の病理を抉りだしている。坂口安吾の戦後まもなくに発せられた「堕落論」を噛みしめながら、闇の奥に迫っていくリポートは迫力満点である。

佐野さんは近年は今次の東日本大震災に伴う福島原発事故の現地にも入り精力的なルポを続けているが、その中で東電の企業体質についても考察を深めている。あらためて読み返すと、奥飛騨をダム建設のために追われた人たちがつくった円山町ラブホテル街と電力(東京電力)とOLを結ぶ奇妙な「電力は国家なり」という巨大な魔力が、今再び、福島の地で浮上しているのだということがわかる。まさしく黙示録であり、名著である。

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