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2011/07/11

佐野眞一著「津波と原発」(講談社、1575円)を読む

日本の近代化とは、高度成長とは何だったか? 三陸大津波と福島原発事故が炙り出す、日本人の精神/東日本大震災にノンフィクション界の巨人が挑む/三陸に住んでいたゴールデン街の名物オカマの消息。日本共産党元幹部の「津波博士」はどこへ? 正力松太郎・天皇・原発のトライアングル。江戸時代、飢饉で荒廃した地は、陸軍の飛行場を経て、堤康次郎が土地を買収し、福島原発となった――/『東電OL殺人事件』で東京電力の実相を暴き、『巨怪伝』では原発を日本に導入した正力松太郎を活写した佐野眞一が、3・11の真実を描く!(講談社BOOK倶楽部より)

Sanosin

佐野眞一さんによる東日本大震災リポートである。いくつかの文章は週刊誌などで読んでいるが、あらためてまとめて読むと迫力満点である。

第1部「日本人と大津波」に登場する元新宿ゴールデン街の「おかまバーの名物ママ・キン子」と<創共協定><津波てんでんこ>の当事者である「日本共産党元文化部長・山下文男」、さらに日本の漁業530万トンのうち「1万トンはオレが獲っていたいたんだ」という「定置網の帝王・山根正治」の嗚咽などを読むだけで、地震と津波災害の恐ろしさとその現場を生きている人間の思いというものがぐっさりと伝わってくるのである。

第2部「原発街道を往く」もすごい。うなることも多い。福島第一原発のある場所は昔は長者原と言われ、陸軍の飛行場があった。その後、塩田になったが、それをやっていたのは堤康次郎。その堤は情報を得ていて、3万円で手に入れた土地を3億円で売った。そして、日本を原発だらけにする基本をつくった読売新聞の正力松太郎は長嶋の「天覧試合」の前に、「天覧原子炉」を実現していた。何よりも、なぜ福島が原発の建設場所に選ばれたのか。人間模様、土地柄、国策などの糸が巧みに折り重なって、もはや後戻りできない場所に追い込まれたのだとわかる。

佐野さんの文章はリアリズムであるが、どこかで文学青年の匂いが立ち上る。

「それが発電所だとわかるのは、そこから空高く張られた送電線が、南に向かって何本も伸びているからである。風光明媚な海岸線に高々とした送電塔が建つ。/そのアンバランスな風景を目の当たりにして、『浜通り』が“原発銀座”と呼ばれる理由が、初めてわかった。そこから東京に、そして不夜城の銀座に向かって日夜電力が送られていたことを思えば、“原発銀座”というネーミングは、まことに皮肉である」

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