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2011/06/16

角田光代著「八日目の蝉」(中公文庫、620円)を読む

「母性」をテーマにしたサスペンス作品。子供を誘拐した女・希和子の3年半の逃亡劇と、事件後、大人になった子供・恵理菜の葛藤を描く2章(プロローグである第0章を入れると3章)から構成される。 2005年11月21日から2006年7月24日まで読売新聞夕刊にて連載された。第2回中央公論文芸賞受賞作。2010年、NHK総合にてテレビドラマ化、2011年には松竹配給で映画化された。(wikipedia より)

Semi

角田光代さんのベストセラー作品をようやく読んだ。テレビドラマも映画も見ていないので、まったく初めて知る内容であった。

新聞連載小説ということもあるだろうが、さすがに読みやすいうえに圧倒的にうまい。幼児誘拐犯である野々宮希和子と薫(恵理菜)の逃亡劇がスリリングでドラマティックで、実にヒューマニスティックなのだ。女から女たちへのバケツリレーならぬ人間リレーで、女性と幼児の物語は普遍性を獲得していく。さびれていく地域、あるいはヒーリングを提供する出家集団など、この何十年かの日本の風景も巧みに織り込んでいる。

物語は逃亡劇が終わった後は、子どもの視点からの「家族」「血縁」の問題が捉えられていく。こちらも、情報化社会がいかに消費する物語を求めているかが示されている。

解説を池澤夏樹さんが書いているが、女の力強さというか不屈の確信性に比べて、男たちはなんともだらしがない。そういう意味で本作は男とは何か、ということを的確に浮き彫りにしてみせた見事な文学作品かもしれない。

セミは成虫になってから7日の命という。ならば「八日目の蝉は、ほかの蝉には見られなかったものを見られる」というわけだが、そうした孤絶の体験もまたよし、という視点が作者と作品にはあると言えるだろう。

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