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2011/04/08

まさきとしか著「熊金家のひとり娘」(講談社、1785円)を読む

サイキック・ミステリーの趣があるが、描かれているのは人間の絆を通じた自己確認の形である。

物語はまず1971年、小さな北の島から始まる。「拝み屋」の血筋の娘、熊金一子。祖母と暮らしているが、島の誰かと交わり跡継ぎを産むという運命に逆らい島を出ようとしていた。次に1992年、東京の郊外に住む鈴木明生。男の子として生まれるはずだったことから自分は死んでいるように感じている。友だちは祖母が焼死した小柄な円条とませた女の子のデルタしかいない。自分たちの居場所を探して家を出るが…。続く1995年、明生の妹愛子はあの世とこの世をつなぐ「四次元冷蔵庫」の話を聞く。父親は家によりつかず、母は冷蔵庫を確かめに行った日に姿を消してしまう。そして2010年。家族は解体している。姉の明生は会社務めをしつつ、死期が近づいた父親を時折見舞う。妹の愛子は母親のルーツを求め、北の島を訪ねる。2人が再会した時、母親からの最後の手紙が届いた……。

Kumakane

この小説で「家族」とはいわば呪われた領域である。血のしがらみから抜け出そうとする娘=母親の脱出行は新たな業の積み重ねの始まりでしかなかった。人を殺めずにおれなかった夫、そして少年、生まれてこなければ良かったと思っている娘、あの世の世界の人たちが見えてしまう娘…。それは悲しい物語であるが、しかし、そこに悪意というものはない。彼らが生きているのは恣意(しい)によってではなく、「関係」によってであるからだ。

小さな謎が少しずつ解かれていき、その先には愛のようなものが視えてくる。この不幸な小説が多くの人に読まれるとしたら、絶望は希望の始まり以外のものではないからだろう。

まさきとしかさんは1965年、東京生まれ、札幌育ち。1994年、「パーティーしようよ」で第28回北海道新聞文学賞佳作、2007年、「散る咲く巡る」で第41回北海道新聞文学賞受賞。

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