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2011/04/04

山城むつみ著「ドストエフスキー」(講談社、3780円)を読む

文学史上最大の衝撃、ドストエフスキーとは何なのか?
気鋭の批評家が切りひらくドストエフスキー論の新たな地平

ドストエフスキーの、いわゆる地下室的主人公たちは、ことさらに他者に対して天の邪鬼に反対し不同意を突きつけているように見える。しかし、彼らは、ほんとうは他者の言葉に強く引かれそれに自分の声を合わせたいのだ。ただ、それに声を合わせようとしてどうしても合わせることができないとき、協和と同意の合致点からのその微小なズレには激しい斥力を持つ異和が生じる。それは反論や不同意が産み出す反撥と似て全く非なるものだ。のみならず、そのような反撥よりもはるかに強烈な不協和、憤激を呼び起こすのである。本書は、そのような異和を、反論と不同意から生じる反撥と区別して「ラズノグラーシエ」と呼び、この強い斥力こそがドストエフスキーの世界の主な動力になっていると考えている。――<「まえがき」より>(講談社HPより)

Dos

圧倒された。

それほどドストエフスキーが得意でない人間には、次から次と重なり合ってくる人間と物語世界にひたすら恐れ入るしかなかったのである。

山城さんの評論は「ラズノグラーシエ」(異和)論でもある。これは「自同律の不快」(埴谷雄高)あるいは「弁証法的な主体の二重化」(三浦つとむ)に引きつけて私は読んだのだが、「これであって、これでない」というような引力と斥力が働く磁場がドストエフスキーの世界であるということのようだ。そして、そのドストエフスキーに二重写しになるのが、まさしくイエス・キリストでもある。彼の地上に剣をもって降り立つような憎悪と限りない愛が問われていく。なかなか歯ごたえ十分で、素人にはつらい。ぜひ、岩波新書で書き直してもらわないと、咀嚼しつくすことは難しい名著であろう。

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