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2011/04/18

吉本隆明著「老いの幸福論」(青春出版社、840円)を読む

自らも超・老齢期のただ中にある著者が、「老い」や「死」、「家族」や「教育」の問題について縦横に語り尽くした、初の幸福論。不安や焦りを抱えた日々の生活の中で、今を幸せに生きるにはどうすればいいのか。衰えゆく身体とのつき合い方、老いてからの勉強法、死を迎える準備まで、生のさまざまな悩みに対して“思想界の巨人”が平明かつ率直な語り口で答えた一冊。

吉本隆明(よしもと・たかあき) 1924年東京生まれ。詩人・思想家・評論家。東京工業大学工学部を卒業後、工場に勤務しながら詩作や評論活動を続ける。日本の戦後思想に大きな影響を与え、文学や芸術だけでなく、政治、経済、宗教からサブカルチャーに至るまで、あらゆる事象を扱う「知」の巨人である。 (青春出版社HPより)

Oinokofukuron

本書は2001年に刊行された「幸福論」を新書版としてリニューアル出版したもの。いまや老いの語り部となった吉本さんの人生を考える1冊である。目次は以下のとおり。

1・こきざみの幸福に気づく -超・老齢化社会への心構え
2・知識より叡智が大事 -吉本隆明流・老年からの勉強法
3・家庭内離婚もいいかもしれない -変容しつづける家族を生きる
4・我が子の罪の償い方 -親の責任について考える
5・老親問題も育児問題も一緒 -制度としての介護、実感としての介護
6・ガタがきた体とつき合う -老齢期に入ってからの健康法
7・死を迎える心の準備なんてない -死を語ることの無駄について

吉本さんの本を永年読んできた者にはそんなに目新しいことはない。本書を最初に書いたころでさえ70歳を遠く過ぎ、87歳を迎えつつある吉本さんの「健在」を知る説話集というところである。死について、親鸞に託して吉本さんは言う。

「煩悩に満ちたこの世はふるさとと同じで、なかなか離れ難いところなんだ。安楽だという浄土でも行こうなんて思えないで、煩悩いっぱいのこの世がなごり惜しい。それは故郷に執着するのと同じようなものだ。人間というのは寿命がきて、ひとりでに死ぬというところになったら死ねばいいんだ」

子どもを殺されたらどうするか。親族から発せられる「極刑」論をどう考えるのか。吉本さんは明快だ。子どもを殺されたら、親としては仇を討つしかないではないか。そうせざるを得ないならそうすればいい。だけど、客観(法)に委ねたならば、それに従うしかないだろう。これもまた親鸞同様当たり前のようで深い。

往相から還相へ至る解体の論理が、「親鸞論」以降の吉本さんには貫かれている。この幸福論もまた当たり前のようでいて、還相論から照らし出された至言が随所に満ちていると言ってよいだろう。

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