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2011/03/10

町田康「人間小唄」(講談社、1575円)を読む

町田康「人間小唄」(講談社、1575円)を読む
あの作家を潰す。奴の文学を根底から破壊する。
男は美少女の協力を得て作家を破滅させようとし、作家は全力でこれに抵抗する。
そして魂のテロルが決行される。
人間とは? 生きるとは?彼らの魂はどこに向かうのか?
史上最低のバトルの幕があがった!

俺は崩壊寸前の言葉を信じられない。崩壊した言葉しか信じられないのだ。そしてそんな風に俺を生んだ両親を恨んでいるのだろうか。そんなことは夜になってみないとわからないのだろう。俺はすべてを忘れて米を買いに行った。(本文より)

作者紹介:町田 康(まちだ・こう) 作家・パンク歌手。1962年大阪府生まれ。高校時代からバンド活動を始め、‘81年に伝説的なパンクバンド「INU」を結成、『メシ喰うな』でレコードデビュー。 ‘92年に処女詩集「供花」 刊行。 ‘96年に発表した処女小説「くっすん大黒」で野間文芸新人賞、ドゥマゴ文学賞を受賞。 2000年「きれぎれ」で芥川賞、‘01年『土間の四十八滝』で萩原朔太郎賞、 ‘02年「権現の踊り子」で川端康成文学賞、’05年『告白』で谷崎潤一郎賞、 ‘08年『宿屋めぐり』で野間文芸賞をそれぞれ受賞。他の著書『夫婦茶碗』『屈辱ポンチ』『パンク侍、斬られて候』『浄土』『真実真正日記』『猫にかまけて』『どつぼ超然』他多数。 (以上まとめて講談社book倶楽部HPより)

ちなみに著者メッセージが同じホームページ http://www.bookclub.kodansha.co.jp/100/past/machida_index.html に載っている。以下のとおりだが、面白い。

町田康「人間小唄」(講談社、1575円)を読む

野間文芸賞受賞第一作となる、書き下ろし長編小説だそうだ。作家糺田両奴のところにへたっぴーな短歌が20首送られてくる。送りつけたのは蘇我臣傍安こと小角。そして仲間の女、新未無。監禁ゲームに突入した3人の歌さだめが前半の物語。後半は世の中の気分を喰っているような芸能プロデューサーの猿本丸児。ヌエ的な古物鑑定人の村ヒョゲ滝麻らが加わっての活劇、スラプスティックとなる。

なにせ、監禁脱出のための選択肢として、「短歌を作る」「ラーメンと餃子の店を開店し人気店にする」「暗殺」なんてのは、ふざけすぎているのだが、そんな調子で物語が進むのだから、ファンキーである。昔の筒井康隆のようでもあるが、筒井康隆や永井豪や山上たつひこなんかなら、もっと破壊的に物語が進行するところが、微妙に収まっているのが時代か。

もちろん、この作品は短歌批評としても読めるのであるし、おニャンコ−AKB路線的な芸風批判の大衆文化論でもあるのだが、読んでいるうちにそんなことはどうでもよくなってしまう。最後は頭に錐を刺されて脳が破損してしまった糺田両奴がシュールな文章で第6回グラソヤ雅美文学賞(そうとう権威があるらしい)を取ってしまうあたり、文学を読めない選考委員の多い文学賞への当てこすりじゃなかった批評のようにも読める。

下品であることが、良識派の私にはそぐわないことであったとだけは言っておこう。

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