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2011/03/28

辻原登著「東京大学で世界文学を学ぶ」(集英社、1,680 円)を読む

現役東大生と学ぶ世界文学早わかり講義録。ユダの福音書、ゴーゴリ、二葉亭四迷、村上春樹…。世界と日本の文学の歴史を振り返り、その果実を味わい尽くす。東大生と一緒に学ぶ、面白くてためになる世界文学早わかり講義録。 (集英社
HPより)

辻原登(つじはら・のぼる) 1945年、和歌山県生まれ。1990年「村の名前」で芥川賞、1999年『翔べ麒麟』で読売文学賞、2000年『遊動亭円木』で谷崎潤一郎賞、2005年『枯葉の中の青い炎』で川端康成文学賞、2006年『花はさくら木』で大佛次郎賞を受賞。他の著書に『黒髪』『発熱』『約束よ』『ジャスミン』『夢からの手紙』『円朝芝居噺 夫婦幽霊』『許されざる者』など。(新潮社
HPより)

辻原登著「東京大学で世界文学を学ぶ」(集英社、1,680<br />
 円)を読む


先に優れた小説「闇の奥」を読んだばかりであるが、今度はその作者による文学論である。これが凄い×凄い×凄い!

本書は作家による講義の形式を借りて、近代文学の魅力に深く入り込んでいく。10講の内訳は「我々はみなゴーゴリから、その外套の下からやってきた」「我々はみな二葉亭四迷から、その『あひゞき』から出てきた」「舌の先まで出かかった名前−耳に向かって書かれた<声の物語>」「私をどこかに連れてって−静に爆発する短編小説」から始まり「燃えつきる小説−近代の三大長編小説を読む」としてセルバンテス「ドン・キホーテ」、フローベル「ボヴァリー夫人」、ドストエフスキー「白痴」が語られ、「悪魔の詩」、自作「枯葉の中の青い炎」、ヘンリー・ジェイムズ「ねじの回転」論へと展開する。目からうろこ−の連続である。しかも、論旨は一貫して揺らがない。

サービスなのか「ねじの回転」からパスティーシュ(文体、文意の模倣)することでうまれる物語についても語られ、その結果、新たな作品が生まれることになるのだが、その「抱擁」についての感想を私はすでにしたためている。それも大変な作品だ。

http://takaoudo.cocolog-nifty.com/takaoudoism/2010/03/post-826f.html

それにしても、辻原登さんという作家のダイナミズムがよくわかる素晴らしい文学入門である。小林秀雄が入門書なんか読まないでトルストイ全集を読め、といったところから始まり、作品に即して文学の流れを掬いだす。その心は、「書物至上主義」か。私も世界もすべては作品の中にある。その魅力に取り憑かれたとき、人々は少しずつ狂い始める。だが、それこそ存在の多様性であり、可能性なのだ。翻訳とかパスティーシュとかが繰り返し語られる。その流れの中に、我々もいるということだろう。

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