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2011/02/23

「オール讀物」3月号-第144回直木賞決定発表号

「オール讀物」2011年3月号(文藝春秋、1000円)を読む。ご存じのとおり、第144回直木賞決定発表号ということで、受賞作の道尾秀介「月と蟹」、木内昇「漂砂のうたう」を収載している。「文藝春秋」の芥川賞特集同様に、「オール」も結構な売れ行きらしい。

受賞作はすでに単行本で読んでいるので、今回の読みどころは選考委員の皆様の選評である。アイウエオ順に浅田次郎、阿刀田高、伊集院静、北方謙三、桐野夏生、林真理子、宮城谷昌光、宮部みゆき、渡辺淳一-の9氏が所感を記している。

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木内昇さんの「漂砂のうたう」の下馬評が圧倒的に高かった第144回であるが、選評を見て、一番潔いのがなんといってもベストセラーの達人である渡辺淳一さんである。

渡辺さんは言う。「はっきりいって、今回の候補作で積極的に推したい物はなかった」。実に明快である。受賞の「漂砂」には「小説の書き方自体を、今一度、検討すべきだろう」、「月と蟹」についても「現実の人間への迫力は薄く、ご都合主義で軽すぎる」。厳しい。まことに厳しい。

渡辺さんが正宗の切れ味で評しているのに対し、少し心優しく道を説いているのが宮城谷昌光さんである。

宮城谷さんは「新しい小説には新しい文体が必要だ、と信じているひとりである」という。そこから見て、「もはや小説は、進化しないものなのか」と嘆く。「月と蟹」は「描写のこまやかさが精彩をもたない」、「漂砂」も「装飾の多い文体にみえる。唯物的であるがゆえの弊害であろう」と指摘し、他の作品となると「作品が作品自体を否定する構造は、やはり魅力にとぼしい」「構成上の瑕瑾である。文章も少々粗い」「暴力、殺人、セックスという小説的要素がもてはやされたのは、半世紀もまえである」と柔和なようで手厳しい。

そのほかの人は一応、2作受賞を、まるめて言えば、よしとしているように見えたが、戦に漏れた作品を評価しているのは、たとえば宮部みゆきさんである。貴志祐介さんの「悪の教典」について「B級ホラーのノリでこの大長編を書ききった剛腕と、単独犯による大量殺人という扱いにくい素材を恐れなかった勇気に、私は票を投じました。全編に漂うオフビートな雰囲気は、ちょうどタランティーノの映画がそうであるように、この作品には必須でした」と絶賛している。いかにも、宮部さんらしいなあ、と思ったことである。

選評を読むと、2作受賞とはいえ、すべては紙一重であるように思える。それが、ある者は勝者の賛辞を浴び、ある者は敗者の苦汁を舐める。世の中は不条理であるというしかはない。

■芥川賞人気の「文藝春秋」3月特大号を読む
http://takaoudo.cocolog-nifty.com/takaoudoism/2011/02/post-51d5.html

■道尾秀介「月と蟹」(文藝春秋社、1470円)を読む
http://takaoudo.cocolog-nifty.com/takaoudoism/2011/01/post-76be.html

■木内昇「漂砂のうたう」(集英社、1785円)を読む
http://takaoudo.cocolog-nifty.com/takaoudoism/2011/01/post-ae5e.html

■貴志祐介「悪の教典」上下(文藝春秋社、各1800円)を読む
http://takaoudo.cocolog-nifty.com/takaoudoism/2011/01/post-ffab.html

■荻原浩「砂の王国」上下(講談社、各1785円)を読む
http://takaoudo.cocolog-nifty.com/takaoudoism/2011/01/post-8afc.html

■犬飼六岐「蛻」(講談社、1680円)を読む
http://takaoudo.cocolog-nifty.com/takaoudoism/2011/01/post-423e.html


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