« 芥川賞人気の「文藝春秋」3月特大号を読む | トップページ | 横田真俊著「今すぐ使えるかんたんmini fa cebook基本&便利技」(技術評論社、1239円) »

2011/02/17

宮内勝典著「魔王の愛」を読む

宮内勝典著「魔王の愛」(新潮社、2100円)を読む。

宮内勝典は1944年ハルビン生まれ。60年代末から4年間アメリカ大陸、ヨーロッパ、シルクロード、インドなどを放浪。80年代から90年代にかけて、9年間ニューヨークで暮らし、世界60カ国以上を歩く。79年に「南風」(河出書房新社)で野間文芸新人賞と、芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。他に「ぼくは始祖鳥になちたい」(集英社)「金色の虎」(講談社)「惑星の思考」(岩波書店)などの著書がある。(表紙カバー略歴より)

「魔王の愛」は北海道新聞夕刊などに2009年5月7日から2010年5月1日まで連載された新聞小説を加筆修正した作品だ。作品の魔王とはインド独立の父・ガンジーのことである。

Maou

執筆の狙いは著者によれば、「『焼身』で、戦争に抗って我が身を燃やした仏僧について書いた。かれは毎朝、『非暴力を貫く』という誓いをくり返していた。それを知ったとき、遠い時空の奥から『Xさん』が浮上してきた。その足跡をたどる旅をつづけながら、一つのことを願っていた。酸欠状態の若い人たちに、一回きりの生を見事に使い切った『Xさん』のことを知ってほしいと」ということだ。

ガンジーとは書かず、あえてXさんとされているところに、紋切り型の偉人伝説ではない人間ガンジーに迫ろうとした宮内さんの意欲が貫かれているということか。物語は「ガンジーを求めて」筆者が幻のXさんと問答を襲ながらインドを旅する形で進む。そして、非暴力非服従により繰り返される入獄と断食や「塩の行進」などの抵抗、カースト制度と民衆、イスラムとの関係などを現地にたどる。そして、少年期の同性愛、絶対的禁欲生活、そして美しい女医をはじめとした周囲の女性たちとの同衾などのスキャンダルをも覗いていく。ガンジーの持つ偶像とは異なる生々しい実存が浮かび上がってくるというわけだ。

不思議な小説である。これを読みながら、やはり一種の評伝のように感じてしまうのはなぜか。どこかで、Xさんがガンジー以外ではないからだろう。ダイアローグのようで、実は徹底的なモノローグの小説である。そこが好悪の分かれるところではないだろうか。

|
|

« 芥川賞人気の「文藝春秋」3月特大号を読む | トップページ | 横田真俊著「今すぐ使えるかんたんmini fa cebook基本&便利技」(技術評論社、1239円) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/87302/50896731

この記事へのトラックバック一覧です: 宮内勝典著「魔王の愛」を読む:

« 芥川賞人気の「文藝春秋」3月特大号を読む | トップページ | 横田真俊著「今すぐ使えるかんたんmini fa cebook基本&便利技」(技術評論社、1239円) »