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2011/02/07

「清原日出夫歌集」を読む

現代歌人文庫の「清原日出夫歌集」(国文社、1260円)を読み直す。


清原日出夫は1936年1月1日、厳寒の根釧原野(中標津)生まれの歌人である。小学校まで5キロを冬はスキー、夏は徒歩で通学した。父の影響で小学生時代から啄木、牧水に親しみ、高校生時代に<砂の上の卓>で高安国世を知り、初めて現代短歌に遭う。1958年立命館大学法学部に入学、短歌会で坂田博義、黒住嘉輝らと相知り、<塔>に入会。1960年、平凡な一学生として<安保闘争>を体験。1964年夏、歌集「流氷の季」を上梓する(以上、歌集より)。大学卒業後、長野県庁に勤め、その後、関連会社にも勤めたが、2004年6月、67歳で没。死後、第2歌集となる「実生の檜」を発行している。

「清原日出夫歌集」を読む


清原は安保世代で、国論を二分した60年闘争のころは「西の清原、東の岸上(大作)」と並び称されたという。

今回に入手した国文社版歌集には「流氷の季」を中心とした安保詠が多数見られる。

・わだつみの像を花束埋めゆき ああいま欲しき理解ある批判
・またストかと罵る一人いるクラス戸を開けて入るまでの苦しみ
・何処までもデモにつきまとうポリスカーなかに無電に話す口見ゆ
・投光器に石を投げよと叫ぶ声探り光は定まりて来る
・乗り越えて君が幾ばくの危惧あれば口ごもる党への批判
・三池労組分裂とだけ聞きて立つ電圧低きラジオの前に
・党を追われ即ち職の道絶たれ気付かず反共になりゆく一人
・職を得し誰にも祝い言われつつ失いしものまださだかにならず
・あるところで一歩及ばざりしわれか岸上大作の場合坂田博義の場合

これらの作品の持つ臨場体験の痛々しさがよくわかる気がする。そして、こうした歌の持つ緊張感は持続するには体験の重みに支配されているがゆえに苦しいものだっただろう。歌人はその後、吉本隆明の表現によって、「沈黙」と「停滞」をくぐり抜けていったと知る。

あらためて読み返して、時代の表現というものの限界と運命を考えさせられることであった。このことは決して他人ごとではない。

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