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2010/09/20

リチャード・バック著、五木寛之訳「かもめのジョナサン」(新潮社)を読む

リチャード・バック著、五木寛之訳「かもめのジョナサン」(新潮社)を読む。現在は新著文庫で出ているようだが、訳あって手元にある1974年出版本なので、定価は600円というのが当時の価格である。

O

以前、次のような感想を持ったことがある。

《作品によれば、ジョナサンは風変わりなカモメである。両親の心配をよそに、仲間からただ一人離れて、自由な飛び方に熱中している。そして、他のカモメにはできないような宙返り、緩横転、分割横転、背面きりもみ、逆落し、大車輪などの高等技術を見いだす。そうした彼を待っていたのは、群れのカモメたちの「評議集会」という裁判であった。彼は、「カモメ一族の伝統と尊厳を汚した」として<遥かなる崖>での一人暮しの流刑に処せられることになった。彼は反論する。「聞いてください、みなさん!生きることの意味や、生活のもっとも高い目的を発見してそれを行う、そのようなカモメこそ最も責任感の強いカモメじゃありませんか?千年もの間、われわれは魚の頭を追いかけ回して暮してきた。しかし、いまやわれわれは生きる目的を持つにいたったのです」。もちろん、そうした主張など受け入れられず、彼は一人、追われるが、精神力のコントロールを通じてさらに高い飛翔のレベルを獲得する。
 長い時間がすぎたある日、ジョナサンの前に二羽の輝いたカモメが「わたちたちはあなたの兄弟だ」と告げる。
 彼らに導かれ、「天国」へ行き、ジョナサンはさらに高いステージへと至る。そして彼は何百万というカモメから選ばれた一羽である、と知らされる。優れた達人や長老の指導で彼は瞬間移動、時間や空間を自由に飛ぶことができるようになる。「おれは完全なカモメ、無限の可能性をもったカモメ」との歓びがジョナサンを貫く。彼は天国を離れ再び地上に戻り、追放された若いカモメたちの指導者となる。「われわれ一羽一羽が、まさしく偉大なカモメの思想であり、自由という無限の思想なのだ」と彼は繰り返し語る。そして彼らは「無限」に向かってさらに進んでいくというところで物語は終わる。
 名前だけかどうかは知らないが、翻訳者の五木寛之も「物語の底には、何か不可解なものがある」とのべ、アメリカの精神風景を象徴しているにしても、何か同感できない、ということを書いている。》
《選民意識には、反吐が出る。私はたとえば、こうした「無限」への渇望や「超能力」へのを除けば、アメリカがベトナム戦争を初めとした多くのスティグマを持ち、若者たちの中に大衆からの逸脱願望があったことの象徴としてジョナサンを理解していた。しかし、そうした願望は一種の結論あるいは動機づけであり、彼らが最終的に手にしたかったのは、ドラッグを使ってでも訪れてくる至福感であることがジョナサンを読んでいて分かった。その快感のために、彼らは世俗から逸脱せざるを得ないことを、作品は強調している。そして、そうした存在を選ばれたものと美化している。》

その感想は1995年にある事情があって書き留めたものであるが、今回、あらためて読み直しても、その感想は変わらなかった。「ジョナサン」は70年代アメリカの精神風景をヒッピー的なかたちで、表現しているのだろうが、それにしては宗教的であり、そこには現世を超えていきたい衝動のようなものが澱のように淀んでいる。

不思議な本と言うよりは、奇妙な本という印象である。

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