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2010/09/11

蜂谷涼著「舞灯籠―京都上七軒(かみしちけん)幕末手控え―」(新潮社、本体価格1500円)を読む

新撰組隊士、龍馬、会津藩家老……敗れざる敗者に女は魅せられる。これぞ「歴女」の真髄、時代小説の新潮流。
佐幕派と尊攘派、龍馬らが贔屓にし、京の都で最古の歴史と最高の格式を誇る花街、上七軒。大義は一夜にして変わり、往来では血で血を洗うなか、舞妓と芸妓、女たちは、惚れてはならぬ、忘れるしかない男に心惹かれ、身を尽くす。柔肌の熱き血汐を描き、幕末史を塗り替える新鋭女流作家の連作時代小説。

蜂谷涼(ハチヤ・リョウ)は1961(昭和36)年、北海道生まれ。地元北海道を中心に、テレビやラジオに出演、また旺盛な執筆活動を行っている。2008年、『てけれっつのぱ』が劇団文化座によって舞台化され、文化庁芸術祭賞(演劇部門)の大賞を受賞した。主な著書に『雪えくぼ』(新潮社)、『へび女房』(文藝春秋)、『蛍火』(講談社)、『てけれっつのぱ』(柏艪舎)などがある。(以上、新潮社HPより)

Maidoro


本書は「舞灯籠」「雛送り」「闇の現」「結界」「飛花」の5編からなる。それぞれ京都・花街界隈に暮らす女性たちが主人公であり、通して、芸妓・梅嘉が全体の<観察者>になっている。

「舞灯籠」は芸妓・小梅と新撰組副長助勤・尾形俊太郎。「雛送り」は芸妓・梅乃と赤報隊・相楽総三。「闇の現」は総菜屋の娘・千代と托鉢僧・清幻。「結界」は芸妓・梅嘉と呉服屋「多真松」の伊十平。「飛花」は武家の娘で糊売りのちとせと会津藩の家老・上澤龍三郎。

正直に言うと、一編一編だけでは余情はあれども物足りない。何か踏み込みが足らぬままで次に進む。だが、最後まで読んで、全体が見えて、なるほどと得心しつつあらためて色街界隈に生きた女と時代を駆け抜けた男たちの「縁」というものの全貌が浮かび上がってくる仕掛けである。

時代小説は歴史上の有名人を援用する。坂本龍馬とか西郷隆盛とか新撰組などのイメージに補強されて、物語が転がっていく。そこが現代小説に比べると、定型的である。そうした下地に作家の想像力がかみ合って進む。純文学派の自分としては、作家の文章の冴えを見せられて、うまいなあ、と思いつつ、もっと固有の葛藤みたいなものがあるだろうになあ、などと負け惜しみを言うのである。

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