« 万城目学「かのこちゃんとマドレーヌ夫人」(筑摩書房、本体価格860円)を読む | トップページ | 冲方丁「天地明察」(角川書店、本体価格1800円)を読む »

2010/07/14

道尾秀介「光媒の花」(新潮社、本体価格1400円)を読む

直木賞候補作読書シリーズ第5弾、道尾秀介「光媒の花」(新潮社、本体価格1400円)を読む。

印章店を細々と営み、認知症の母と二人、静かな生活を送る中年男性。ようやく介護にも慣れたある日、幼い子供のように無邪気に絵を描いて遊んでいた母が、「決して知るはずのないもの」を描いていることに気付く……。三十年前、父が自殺したあの日、母は何を見たのだろうか?(隠れ鬼)/共働きの両親が帰ってくるまでの間、内緒で河原に出かけ、虫捕りをするのが楽しみの小学生の兄妹は、ある恐怖からホームレス殺害に手を染めてしまう。(虫送り)/20年前、淡い思いを通い合わせた同級生の少女は、悲しい嘘をつき続けていた。彼女を覆う非情な現実、救えなかった無力な自分に絶望し、「世界を閉じ込めて」生きるホームレスの男。(冬の蝶)など、6章からなる群像劇。大切な何かを必死に守るためにつく悲しい嘘、絶望の果てに見える光を優しく描き出す、感動作。 (AmazonのHPより)

Kobai


とにかくうまい。うますぎる。短編連作で、たとえば一つの物語のサブ的な登場人物が次の物語の主人公になって登場するような形でつながっていく。まさにこれは伊藤整が名著「文学入門」第1章「物語りの成立とその形式」6で「露伴の連環体形式」で指摘している手法であろう。「風流微塵蔵」という未完の小説が、「一群の人間を使って、いくつかのエピソードを、単独でなく、それぞれが、鎖の環のようにつぎのエピソードとつながる形で書いてゆきながら、全体として長い鎖のような物語りたらしめようとした作品」であるとして、それが「連環体」だということを思い出した。

ただ、希望は感じられるが、いささか暗い。そして「連環体」のために、つくり過ぎがいいのか悪いのか。

道尾さんは1975年東京都生まれ。「球体の蛇」が第142回直木賞候補になっている。本作は第23回山本周五郎賞も取っている。私の記憶が正しければ、ダブル受賞というのは結構、大変なことではある。

|
|

« 万城目学「かのこちゃんとマドレーヌ夫人」(筑摩書房、本体価格860円)を読む | トップページ | 冲方丁「天地明察」(角川書店、本体価格1800円)を読む »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/87302/48875133

この記事へのトラックバック一覧です: 道尾秀介「光媒の花」(新潮社、本体価格1400円)を読む:

« 万城目学「かのこちゃんとマドレーヌ夫人」(筑摩書房、本体価格860円)を読む | トップページ | 冲方丁「天地明察」(角川書店、本体価格1800円)を読む »