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2010/07/13

姫野カオルコ「リアル・シンデレラ」(光文社、本体価格1700円)を読む

第143回直木賞候補作の姫野カオルコ「リアル・シンデレラ」(光文社、本体価格1700円)を読む。これが第3弾である。

「不況日本に暮らす現代人にこそ知ってほしい、倉島泉の人生を。新たなるドキュメント・フィクション。」
童話「シンデレラ」について調べていたライターが紹介された女性、倉島泉。長野県諏訪温泉郷の小さな旅館の子として生まれた彼女は、母親に冷遇され、妹の陰で育ったが、町には信州屈指の名家「片桐様」の別荘があり、ふとした縁で、松本城下の本宅に下宿することになる。/そこで当主の一人息子との縁談がもちあがり……。多くの証言から浮かび上がってきた彼女の人生とは?(光文社HPより)


Real


主人公の名前が倉島泉。「くらしま・いずみ」であるが「くらしま・せん」でもある。これはもうはっきり言って、インチキだらけの世の中に対する安置テーゼじゃなかった、アンチテーゼを意味しちゃっている。おかしいじゃん、そんな俗まみれの価値観って。そんな声が聞こえてくる。

泉ちゃんは不思議である。美人なのか、不美人なのか。よくわからない。というよりも、その美しさが分かる人には美しく、それがわからない人には農夫のようなおばさんに見えてしまうのである。つまり万人向けのアイデンティティの持ち主ではないのである。ただの石なのか宝石なのか。試されてしまうのだ。生活についても同じである。それが幸せなのか不幸なのか、試されてしまう。愛もセックスも同じように問われる。

これって結構、つらい話である。できれば、普通に過ごしたいのに、自分の俗物性が照射されるような存在ってのは。それは、当事者にもよく分かっている事情だろう。だから、倉島泉さんは姿を消してしまうのである。きっと風のように、新しい土地にたどり着いて静かにわらじを編み、1人でなじみの居酒屋で飲むこと食べることをまるごと楽しんでいるだろう。きっと、だれかが愛を注いでいるのをちょっとだけ感じながら。

さて、直木賞である。リポートと物語部分が二重に展開されているので、それがいささか私には読みづらいところであった。物語として、残るかと言えば、すごく残る。それは素晴らしいことである。しかし、なんだろうなあ、ちょっと考えさせられすぎるのである。たとえば、幸せってなんだっけ?みたいに。そこが真面目すぎていて、文章の、あるいは物語のチカラとしての「異妖さ」「快楽」につながらないのである。読みながら、こちらの世界に戻って考えてしまうのである。そこが不満である。

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