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2010/04/13

西村賢太「瘡瘢旅行」を読む

西村賢太著「瘡瘢旅行」(講談社、1575円)を読む。

西村賢太

平成の世の中にまだ破滅派の私小説家がいるなんてビックリである。なにしろ、凄い。小説をそのまま信じるとすれば、筆者の学歴は中学卒業のみ。前科もあり、とのこと。90キロの巨体で一緒に暮らす女性には暴力を振るう。性犯罪者の父親を持つので、その種のトラブルだけは起こさないように気をつけている。

藤沢清造というこれまた極めて一部にしか知られていない私小説家を師と仰ぎ、その全集のために有り金をはたいている。ネットで調べてみると、「寡作と放埒のため、生活は貧困の連続。悪所通いに基因する精神病から失踪を繰り返し、芝公園内で凍死体となって発見された」とあり、そういう作家に私淑するあたりに、西村賢太という作家の筋金入りのプライドのようなものが感じ取れる。

収録作品は「廃疾かかえて」「瘡瘢旅行」「膿汁の流れ」の3本。タイトルだけで相当に渋い。はっきり言うなら暗い。暗いだけでなく、病気めいたものが漂っている。タイトルに「廃疾」「瘡瘢」「膿汁」などという言葉は普通使わないものだろう。ちなみに、「瘡瘢」は新明解国語辞典には該当項目がないが、「きずあと」の意味だそうだ。

あとがきによれば、「群像」誌に連載された本作品群だが、「感情的な問題から出禁を食らい、約二年半を無意味に干されてきた」そうで、「表題には初出時、掲載誌側から最もゴミ扱いされたものを選んだ」とのこと。

恐ろしい作家である。

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コメント

西村賢太、いいっすよ。
文庫にもなってます。
「どうで死ぬ身のひと踊り」(講談社文庫)と「暗渠の宿」(新潮文庫)を読みました。
人間のくずというか、女を殴るとんでもない奴が、それでも生きていかなければならないという切ないオーラを出しながらもがき続ける姿がサイコーです。

投稿: 双子山親方 | 2010/04/13 16:06

そうですか、親方も愛読されていますか。あたしゃ、あの不思議な文体含めて感服いたしましたが、若干、もう結構かなあ。その昔、近松秋江の作品を読んだときの、ちょっと引き込まれつつ痛かったのを思い出したことでした。

投稿: 席亭うど | 2010/04/13 21:48

作為のない車谷長吉ってとこですね。
あのくだらない人間性を「作っていない」ところがなかなかだと思いました。
でもDV男の心理って、いったい…。

投稿: 双子山親方 | 2010/04/14 09:25

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