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2010/04/17

村上春樹「1Q84 BOOK3 <10月-12月>」(新潮社、1995円)を読む

村上春樹著「1Q84 BOOK3」(新潮社、1995円)を読む。

1984

参考
BOOK1について
http://takaoudo.cocolog-nifty.com/takaoudoism/2009/07/1q84-book1-0f48.html

BOOK2について
http://takaoudo.cocolog-nifty.com/takaoudoism/2009/08/1q84.html


天吾と青豆の物語はいよいよ起承から転を迎える。狂言回しと動き回るのは「牛河」である。このおなじみの人物は探偵のように青豆に迫り、そして幼なじみである天吾に迫っていく。

BOOK2で死んだかのように思われた青豆は死ぬことを思いとどまっていた。天吾は父親の入院している猫の町で「アフリカの日々」を朗読してみせるエピソードがサハリン島のように挟み込まれている。看護婦さんたちが天吾に接近してくる。天吾のアパートに残された「ふかえり」にはNHKの集金人が繰り返しやってくる。

天吾は「空気さなぎ」を知る看護婦とドラッグをやり、セックスをする。出口が塞がる前に猫の町をでようとしなければならないと思う。牛河は天吾と青豆の小学校時代の教師から2人が同級生である確かな証拠を聞き出す。青豆はセックスをしてないのに妊娠しているのに気づく。そして、その父親が天吾であると思っている。彼女の家のドアの前でもNHKの集金人が叫んでいる。

天吾は昏睡する父親がアパートでふかえりの前に出没するNHKの集金人であると思う。父親に、もうドアをノックしないでと訴える。ふかえりは部屋から消えてしまう。小説「空気さなぎ」の仕掛け人である小松はしばらく姿を消していたが、実は誘拐されていたという。過激な教団「さきがけ」の仕業であった。小松は天吾とふかえりの性的関係を疑うが、天吾はあえて否定する。

天吾の父は亡くなりNHKの集金人の制服を着せて火葬される。一方、牛河は行動をつかんだ青豆からの連絡で、タマルに拷問を受け、殺される。暗い場面だ。青豆と天吾はだんだん近づいているのを感じる。だが、リトル・ピープルの囃す声も聞かれ始める…。牛河の魂の一部はリトル・ピープルによって、空気さなぎになろうとしていた。

再会した天吾と青豆は「1Q84年」「猫の町」-「月が2つある世界」を脱出することを決意する。青豆が降りた高速道路を元に戻るのだ。空を見上げると、月はひとつになっていた。それが元の世界なのか、新しい世界なのかはわからないが、「1Q84年」でないことは確かだった。青豆が妊娠したとき、天吾はふかえりとセックスをしていた。ふかえりは天吾の精を青豆の体に入れる装置だったのか。2人は抱き合い、青豆のお腹にいる小さな命を守ろうと思う。

かくて、天吾と青豆は二人で一つになった。預言者を求めている教団が二人から奪おうとしているものは何か、ふかえりとは母なのか娘なのか、リトル・ピープルはいかに悪意を醸成するのか、1984年の世界の書き換えは可能なのか。いよいよ、この長い物語は全貌を明らかにし、結を迎えることになる。どちらかと言えば、純文学というよりはSFミステリーである本作はBOOK4に引き継がれる。

今回は天吾の父親が影の主役である。市川のマチを歩き回る姿をリフレインし、悪霊のようにあるいは告知人のように何度も何度も姿を現す「NHKの集金人」という擬態になんとも言えぬ業を背負わせる作者、村上春樹の悪意をどう考えればいいのだろうか。

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