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2010/03/21

東浩紀「クォンタム・ファミリーズ」

東浩紀著「クォンタム・ファミリーズ」(新潮社、2100円)を読む。

「批評から小説へ、ゼロ年代のラストに放つ東浩紀の新境地!
2035年から届いたメールがすべての始まりだった。モニタの彼方には、まったく異なる世界の、まったく異なるわたしの人生があるのだ――。高度情報化社会、アリゾナの砂漠、量子脳計算機科学、35歳問題、幼い娘、ショッピングモール、そして世界の終わり。壊れた家族の絆を取り戻すため、並行世界を遡る量子家族の物語。」(新潮社HPより)。

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SF風ではあるが、実験的な純文学である。量子論と情報技術についての壮大な布置は現代性を示す細工だ。それと同時に、映画的に言えば「ブレードランナー」の世界、文学的には村上春樹の「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」への偏愛、春樹では名前は出ていないが「1Q84」の時間と時代の書き換えに近似発想がある。

バーチャル空間に転送され邂逅する家族の物語を襲うのは結局は限定された情況を生きるしかない人間がいかに自由意思と運命に折り合いをつけ、泥のような世界に立ち向かう覚悟のようなものである。牧歌的な家族から個の孤絶を通過した上での関係的家族の自立が問われていよう。

小説としては理に走り過ぎて背伸びする読者を相手にしているようで、SFじゃなく純文学として表出するならば書き方に工夫がほしい。また構成的には第二部がハイペースで謎解きにワープしたのが駆け足に思えた。とはいえ、知識はもちろん才能溢れた可能性の文学作品が誕生したのは間違いない。

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