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2010/03/13

橋本治「巡礼」

橋本治著「巡礼」(新潮社、1470円)を読む。

いまはひとりゴミ屋敷に暮らし、周囲の住人たちの非難の目にさらされる老いた男。戦時中に少年時代を過ごし、昭和期日本をただまっとうに生きてきたはずの男は、いつ、なぜ、家族も道も、失ったのか。誰もが目を逸らすような現在のありさまと、そこにいたるまでの遍歴を、鎮魂の光のなかに描きだす。橋本治、初の純文学長篇。(新潮社HPより)

橋本治「巡礼」


昨年発表された小説の中で高い評価を得た作品のひとつである。地の文の部分にいささか評論臭さがあるものの、とても真摯にある時代を生きることの意味を問う力作である。

主人公の忠市は荒物屋の跡取りである。この荒物屋というものの中に作者が小説に込めた時代的思いが伝わってくる。この日常雑貨の店が安売りの主婦の店というスーパーにとって変わられる。大衆社会の中で意味を失っていく存在との共生がゴミ屋敷となる。

なんとも切ない。名もなきものの墓碑は誰が建てるのか。そして、さまよう魂をいかに鎮められるだろうか。

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