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2010/03/18

佐川光晴「牛を屠( ほふ)る」

佐川光晴著「牛を屠(ほふ)る」(解放出版社、1575円)を読む。

佐川光晴「牛を屠(<br />
 ほふ)る」


北海道大学法学部を卒業し出版社に勤めた後、「ここはお前なんかの来るところじゃねえっ!」と怒鳴られながらも、埼玉県の食肉荷受会社に十年ほど働いたという異色の経歴を持つ作家による体験記である。

ナイフを手に、牛や豚を食卓にあげるための解体作業の仕事の現場をしっかりと伝えている。ある意味で驚くほど冷静に事実を記し、心の動きを見つめる。それは作家らしい挑戦だ。

両親や家族のことにも触れており、正義感の強い父親の姿を淡々と描く中に作家の熱い芯のようなものがうかがえる。自分の気持ちを妻に伝えたかったという小説を書き始めた動機もわかる気がした。

本書は差別と戦ってきた解放出版社が、「われわれが無自覚に依拠してきた物の見方を根底から洗い直す」ことを意図して企画されたシリーズ「向う岸からの世界史」の一冊。そしていつも明るく問題提起する編集者の多井みゆきさんが読むことを勧めてくれた。ありがとう。

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