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2010/03/14

小路幸也「DOWN TOWN」

小路幸也著「DOWN TOWN」(河出書房新社、1680円)を読む。

小路幸也さんは1961年、旭川生まれ。広告会社勤務を経て作家になった。

私より十歳下だ。会社の後輩に旭川出身でヤベ君という人がいたが、彼なんかと同じ世代か。

小路幸也「DOWN TOWN<br />
 」


本作は喫茶店小説である。北海道版のオビには「1979年。旭川市の高校生だった僕の毎日は、コーヒーと音楽と仲間との会話で埋め尽くされていた。」と小路幸也さんの言葉が書かれている。

年上の女性たちばかりが集う喫茶店「ぶろっく」。先輩の生徒会長ユーミさんと出会ったことから紛れ込んだ高校生ショーゴ。そこで繰り広げられるちょっと謎めいた人間関係と大人へのステップアップ。

テーマは反復される。少し崩れた家族、きょうだい、恋人といった<対幻想>がいかに再生され、癒された<個的幻想>が社会の側に開かれていくかというものだ。その昔の教養小説(ビルドゥングスロマン)というものの一つとさえ言えるかもしれない。

小路幸也「DOWN TOWN<br />
 」


青春時代がどこかしら甘美であるように、この小説は甘い。<非在>の恋人のためにつくられ喫茶店というロマンチシズムと粘り着くような善意の連鎖というものは、社会的存在に自覚的になればわかることだが、あらかじめ失われているからだ。

だが、傷つきながらも可能性が開けてみえる瞬間はあるものだ。本作は其の意味で紛れもなく青春小説である。

本書を読了後、私は札幌から列車で旭川に行った。喫茶店のあった四条八丁目や買物公園を一巡りし、帰りの列車の中で携帯電話で原稿を書いている。まだ雪の残る街が33年前と変わってしまっていても、そこには可能性があった。

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