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2009/08/05

「大地に接吻する日」

 8月5日は俳人、中村草田男の命日である。すぐ思い浮かべるのは次のような句であろうか。

 「降る雪や明治は遠くなりにけり」
 「万緑の中や吾子の歯生え初むる」

 いかにも淡々とした詠調の中に、しみじみとした哀感、あるいは殻を突き破ってくるような感動を押し込めている。

 人間探求派といわれた草田男には、先の作品とは異色の一句がある。

 「原爆忌いま地に接吻してはならぬ」

 大地への接吻と言えば文豪ドストエフスキーの「罪と罰」を思い出す人も多いだろう。人をあやめた青年ラスコーリニコフは、神を信じる女性ソーニャと出会い、自分の罪の許しを請うために、大地にひれ伏す。

 この場合、人間を含めた生物を育む大地とは、世界の象徴であり、それに対する接吻とは世界との和解であろう。

 だが、この俳句の中で草田男は今はまだ大地に接吻してはならないと強く言い切っている。静謐であるだけに、その思いは重い。

 草田男には「全能母に縋れど天燃え原爆忌」という句も残している。こちらも祈りにも似た思いを込めつつ、蛮行を許せぬ心が伝わってくる。

 現在も、核兵器の危機は消えていない。だが、オバマ米大統領も「核なき世界を」と語るまでの変化が生まれつつある。許せる日は近いのか。

 6日は広島、9日は長崎原爆忌。
 

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