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2009/02/07

英国王給仕人に乾杯!

英国王給仕人に乾杯!
英国王給仕人に乾杯!
イジー・メンツェル監督。ボフミル・フラバル原作。イヴァンン・バルネフ。オルドジフ・カイゼル。ユリア・イェンチ。

ヤンは、1963年ごろ、共産主義体制下のプラハで出獄し、ズデーテン地方の山中に向かい、廃屋でビールのジョッキを発見する…。ヤンの人生は給仕人の人生だった。田舎町のホテルのレストランでのビール注ぎの見習いから、高級娼館“チホタ荘”に、そしてプラハ最高の美しさを誇るホテル・パリで給仕の修行をする、古き良き時代。しかし1938年、ヒトラーのズデーテン侵攻でチェコスロヴァキアはドイツに占領され、その時、ヤンは自分よりも小さいズデーテンのドイツ人女性リーザに恋をしてしまう…。

『スイート・スイート・ビレッジ』『つながれたヒバリ』でおなじみのチェコの素晴らしい映画作家イジー・メンツェル監督作。軽やかな語り口と甘美な映像美で、小さな人間ヤンを主人公に小国チェコの激動の20世紀現代史を展開する。主演ヤンは二人一役で、若いヤンをブルガリア俳優のイヴァン・バルネフ、老ヤンをチェコ俳優のオルドジフ・カイゼルが演じる。ヤンが恋に落ちるズデーテンの小さなドイツ女性リーザはユリア・イェンチ。“英国王給仕人”の給仕長にはスロヴァキアの名優マルチン・フバ。(作品資料より)(goo映画より)

傑作だ。チェコという小さな国の運命を、小さな給仕人ヤン・ジーチェ(子どもという意味だそうだ)に重ね合わせて描き出した。しかも、政治がいかに残酷かを示す。ナチス・ドイツの拡大主義はもちろん許せないが、共存して暮らしているマージナルな世界を消滅させてしまうことをある意味で鋭く批判している。主人公を小さな男に、そして愛した女性をさらに小さな国境地帯のドイツ人女性とした視点が素晴らしい。そしてエスプリというか、皮肉というかユーモアもいっぱいだ。

映画の楽しみは、通奏低音に添えて、わんさかと出てくる美女達である。とにかくパラダイスの娼婦に始まり、ホテル・パリとチホタ荘の接待婦、そしてナチスの優生思想下での天真爛漫なゲルマン娘たちが、どれもみな美人なのだ。とりわけだれとでも寝たと言うことで国境地帯に追いやられてきたチョコレート工場の女は素晴らしい。いずれにしろ人間性の追求と同時に、その官能性の高さでも本編は傑作である。

映画のタイトルはホテル・パリにいる英国王の給仕をしたという反ナチスを貫いた反骨の給仕長に対して敬意を表している。主人公はエチオピア皇帝から勲章をもらったことを誇りにしているのだが。コインをばらまくことで人間の本性を試す主人公、その主人公にお金の大切さを教え、監獄列車で収容所に送られていくユダヤ人行商などエピソードも印象的だ。さらに、物語を刑務所から15年ぶりに出てきて国境地帯で働く老主人公の回想の形で進めていることで、批評的になった。そこは流刑囚の場所であり、スターリニズムの過酷さも示している。ラストの幻の乾杯シーンは人生への悔いを対象化して見事である。

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「英国王給仕人に乾杯!」★★★ イヴァン・バルネフ、オルドジフ・カイゼル、ユリア・イェンチ主演 イジー・メンツェル監督、チェコスロバキア 、2007年、122分 「誰でも願う理想の生活をかなえようとする 主人公の生真面目な生き方が なんともおかしく、そしてどこか物悲しい」 名古屋には真面目な映画館がある、 名古屋駅近くの「シネマスコーレ」と 今池にある「シネマテーク」だ。 この二つの映画館ではシネコンでは 上映されないマイナーな映画が上映されている... [続きを読む]

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