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2008/12/17

「芸術言語論」への覚書

「芸術言語論」への覚書
吉本隆明著。李白社発行。本体価格1700円。

「日本語」の本を買いに行ったが、売っておらず。ひょんなことから、吉本隆明さんの新著を買うことになった。

未発表原稿の「神話と歌謡」論を中心に雑誌になどに近年書いている原稿を収めた論文というよりエッセー集である。

初期歌謡論では相変わらず、神話的伝承と古謡との継ぎ目を分析して、権力と歌謡の成立の現場を想像力豊かに提示している。また、アイヌ語が初期歌謡の世界に含まれているという(村山七郎の研究を援用?)部分などは、古代日本人を考えるうえで興味深い。

第2部は「情況との対話」というエッセー集だ。ここは、はっきり言って玉石混交である。思想家・吉本隆明の射程の長さと拡がりを感じさせる一方、各論に入ると誤りや乱暴な意見も多く、論としてのレベルは必ずしも維持できていない。

これは、もちろん、吉本隆明の責任ではなく、出版する側が、配慮すべき事柄に属する。吉本をおもちゃのブランドのように使ってはならないだろう。この雑文集に「芸術言語論」などというタイトルを付けるのは、少なくとも吉本隆明の幻想論、文学論、心的構造論、さらに情況論の透徹したラジカリズムというものを学んできた者には許せないことである。吉本の言うことなら、なんでも思想論というようなたわけた態度はアジア的な絶対君主制(たとえば北朝鮮の金王朝)の恥ずべきカリカチュアであるだろう。

田中角栄についての評価、民主党の可能性論、さらには舛添厚生労働大臣への期待などなどは、床屋政談以外のものではない。なるほどという、ところもあるが、事実関係ですべて間違っているだろう(と思う)。靖国問題にしても、ちょっと違う。

かつてエンゲルスがマルクス亡き後に、つまらぬ俗流唯物論的なあれやこれやを書いていることを、なにかの文章で吉本がとがめていたと思う。そういう事態である。

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