« マー君の色紙 | トップページ | 札幌夜景 »

2008/10/13

桜木紫乃「風葬」を読む

桜木紫乃「風葬」を読む
桜木紫乃「風葬」を読む
桜木紫乃「風葬」(文藝春秋社、本体価格1238円)。

「氷平線」の桜木さんの第二作である。帯に「書下ろし新感覚官能ミステ リー」とある。個人的には濃厚な情愛の世界を期待したが、どちらかと言えばミステリーになっていた。

物語は、釧路で書道の先生をしている篠塚夏紀が母親の口から出た「ルイ カミサキ」という言葉に導かれて、国境のマチ、根室に来たことから、元教師親子が三十年前に根室で起きた出来事の謎と直面していく。夏紀の出生の秘密、米ソ冷戦下でのスパイ合戦、レポ船の暗躍、漁船拿捕と密漁、漁師親娘の不審死、花街と闇人脈など過去の亡霊たちが蘇る。

読み進む間は大好きな官能描写に浸る余裕はない。次々に襲ってくる事件に追われてしまうのだ。なんだかフィルム・ノワールの世界に紛れ込んだような感じに襲われる。

物語の背後には詳細を触れていない多くの愛情物語が潜んでいる。詳しくは書けないが、夏紀の母、春江の恋、あるいは若くして諜報員となった男の純愛など。もちろん、そこまで書くと、一冊には当然収まらない。とはいえ、ミステリーとして読むか恋愛ものとして読むか。少し迷うところである。

作者は第1作同様、北海道を舞台に、北の大地と海で生きている人間像を描き出そうとしていることは、道産子の身びいきではなく、強い意志というものを感じさせてくれる。「現場」を手放さず、さらに第3作、4作へと息をもつかさず進んで欲しい。

|
|

« マー君の色紙 | トップページ | 札幌夜景 »

コメント

通読させていただきました。
その感想は私のブログ
http://hutagoyama.cocolog-nifty.com/blog/2008/10/62-e0be.html
まで。

投稿: 双子山親方 | 2008/11/03 00:47

双子山親方さんは、辛口の批評ですね。
私は昭和50、51年に根室にいたので、レポ船の世界が懐かしかったですね。あの、超えられない国境を抱えた街のどうしょうもない閉塞感ってのは恋愛の中に伝わってました。でも、作家の持ち味である官能に溺れたかったのに、そこが弱い。出し惜しみだな。テーマを絞り上げ現実に足を掬われずイメージから変われ、というのが恋愛小説家への勝手な希望です。

投稿: 席亭うど | 2008/11/04 22:56

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/87302/42774754

この記事へのトラックバック一覧です: 桜木紫乃「風葬」を読む:

« マー君の色紙 | トップページ | 札幌夜景 »