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2008/03/12

とむらい師たち

とむらい師たち
岩波現代文庫、本体価格1000円。

相も変わらず体調がよろしくない。能力以上のことをしているからだ。そんなふうに言われるが、どんなものか。

川上未映子「乳と卵」のどっぷり大阪弁の語り口小説を読ませてもらって、そのとき感じた野坂昭如を久しぶりに読んでみたくなった。びっくりすることに、最近は岩波が「野坂昭如ルネサンス」と称して、かつての名作を復刻しているのだな。びっくり。本屋では心情三派と自称していた野坂昭如らしい「騒動師たち」にも目を引かれたが、本書のほうを選んでしまった。野坂文学の核心である「死(生)とエロス」が横溢しているのではないかという期待からだ。「ベトナム姐ちゃん」「あゝ水銀大軟膏」など5編が収められているが、もちろんメーンは表題作「とむらい師たち」である。

主人公は隠亡の息子ガンめんである。「わし(=ジャッカン)区役所の死亡係、ラッキョは葬儀自動車、先生は医者で、あんた(=ガンめん)がデスマスク師と、こら役者もそろとるやないか、4人で団結して、葬儀業界になぐりこみかけるわけや、こら金なる思うわ」と燃える4人組が<葬儀>をめぐり繰り広げる大冒険の物語だ。水子供養で大もうけしたことから、雑誌発行、葬儀のレジャー産業化で金もうけに走る全学連あがりのジャッカン組、一方、「あの死顔がもってる威厳」にこだわり万国博の向こうを張る葬儀博をめざすガンめん組に二分裂する。だが、葬儀への情熱にあふれる双方とも大成功、遅れを取っていたガンめん組は「死顔様」で新興宗教を開く。

この物語のすごいところは繰り返し出てくるガンめんの土葬体験で、いつも穴を思い浮かべる。そして、復活の儀式を企て、再生まで穴にこもるが、出てくると世界は水爆投下でみな死んでしまっている。ガンめんも母胎に還るように穴に落ちていく。その穴は隠亡だった父親が掘った死者のための穴であると同時に、自分を産み落としながら入れ替わるように亡くなった母親の陰部でもある。生と死が絡み合った人間世界を描いてきた野坂らしいテーマである。

とにかく言葉が過剰だ。どんどんどんどん沸いてくる。「あやしゅうこそものぐるおしけれ」ではないが、言葉と言葉が次々に爆発を起こして、右に左に天に地に連想が広がっていく。混沌としている。それでいて、どこかに倫理が残っている。戦中派のニヒリズムとアナーキズムを超えるエチカというわけか。野坂の持つエネルギーにあらためて驚く。

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コメント

過激な発言や思想、どこか憎めないユーモラスな雰囲気。そうかと思えば切なさが心をいっぱいにする「火垂るの墓」の繊細さ。「すごい男」だな、と思う。

最後に彼を見たのは大島渚をスコ~ンと殴り、
マイクで殴り返されたのが最後のような気がする。
真剣な顔での殴りあいが妙に可笑しかったけれど。
二人ともリハビリ中というのも何かの因縁か。

悩んで大きくなりすぎたのかもしれない・・・

投稿: クロエ | 2008/03/13 00:32

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