ダージリン急行

ウェス・アンダーソン監督。オーウェン・ウィルソン。エイドリアン・ブロディ。ジェイソン・シュワルツマン。アンジェリカ・ヒューストン。ナタリー・ポートマン。
いいね。この色。行ったことないけど、インドだね。青い空、人の息づかいが伝わる市場、そして黄土色の大地。そして、いかれた3人兄弟のマジカルミステリーツアー。一応、母を訪ねる心の旅だけれど、そう簡単にはおさまらない。それでも、家族愛はインド亜大陸の混沌の中に浮かび上がる。傑作だ。
ヴイトンのバッグみたいなおそろいの旅行セットを持つホイットマン3兄弟。おそらく超一流のお金持ちブラザーズだ。交通事故での父の死から離ればなれになっていたが、長年の呼びかけでインドのダージリン急行の旅に集合したのだ。だが、横柄な兄フランシス、調子のいい弟ピーター、内向的(でも恋愛は早い)な末弟ジャックの仲は簡単には戻らない。そんな単色のいがみあいを美しい家族愛に染め上げるのはインドの大地だ。あほなことを続けるうちに、いつしか3人の心は通じ合っていく。そして、父の死に姿を見せなかった母親に会って、一族の胸につかえたわだかまりは氷解するのか。
ロードムービーだ。みんなスティグマ(傷)をかかえている。おたがいにその傷口に塩をなすりつけるのだが、それによってスティグマは静かに消えていく。ヒンズーの世界観をよく知るわけではないし、この3バカがそれを理解しているはずもないが、一種のレットイットビーなのだ。小賢しい知恵などなんの役にも立たない。でも、大地に生まれた人が大地に還る。インドの大地と水と人はしみじみ沁みてくる。
ダージリン急行のまじめな車掌、魅力的なライム娘の美女リタをはじめとした同行者たちは3兄弟の混乱を映す鏡だ。そして、冒頭の短編「ホテル・シュヴァリエ」に登場する青あざの女を演じるナタリー・ポートマンも印象的だ。全裸です。最近よく脱いでますね。
一番印象に残るのは走るシーンだ。タクシーを飛ばしてきた紳士が「あの列車だ」と言ってホームに行くが、列車はすでに動き出している。なんとか飛び乗ろうとするが、追いつかない。すると、後ろから背高のっぽの男がフル回転でやってくる。足が長いのか走るのが速いのか。あきらめた紳士を尻目に、男は見事に列車に飛び込む。その列車がダージリン急行だ。そしてラスト。3バカ兄弟がバッグを手に列車を追いかける。重いセレブの荷物を捨てて、ようやく飛び乗った3人の解放された笑顔。いい終わり方だ。別にインドが心の迷いを洗い流すなんて思わないが、それでもイインドだ。
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